札幌市中央区の皮膚科 宮の森スキンケア診療室

Column

院長コラム

パソコンと本を置いた明るいデスク

保湿剤にはどんな種類がある?乾燥肌を防ぐ効果的な使い方

お肌の科学ゼミ

お肌の科学ゼミ

もうすぐ9月です、秋が近いです。

「今はもう秋 誰もいない海 知らん顔して 人が行き過ぎても 私は忘れない 海に約束したから~」

と、トワエモアの「誰もいない海」を思い出して口ずさんでしまいます。

古い?昭和?(笑)

特に北海道では、秋の音を聞くと冬はすぐそばまで迫って来ており、お肌のカサカサの季節到来を警戒してしまいます。

肌の水分はどのように維持されているのか

さて我々の肌の水分は、どのように維持されているのでしょうか。

お肌、特に表皮では、3種類の水分が存在します。

①表皮内のケラチン蛋白(角質を形成する蛋白)の極性部分に強固に結合する1次結合水。

②天然保湿因子(角質細胞由来の遊離アミノ酸や汗由来の乳酸や尿素など)と結合している2次結合水。

③角層内を自由に動くことのできる自由水。

自由水は喪失されやすく、結合水は加齢変化やホルモンの影響など角層の構成成分や線維の構築に影響されてその量は変化します。

保湿剤とは

保湿剤とは、表皮内の水分(角質水分量)を増加させて、乾燥した皮膚の症状としての肌あれ、亀裂、痒みなどを改善し、乾燥性湿疹が発生するのを防ぐことを目的とした外用剤のことです。

これらを利用しての肌のお手入れが保湿です。

保湿剤は、作用機序から<モイスチャライザー>と<エモリエント>の2つに分類されます。

モイスチャライザーとは

<モイスチャライザー>とは、ヒューメクタントという「肌に水分を与え乾燥から守る吸湿性の高い水溶性の成分」を含み、直接的に水分を角層に供給する作用のある製剤を言います。モイスチャライザーに使用されるヒューメクタントには次のようなものがあります。

コラーゲン

魚の骨や皮、ウロコからつくられます。繊維状の蛋白質で、人体にも多く存在します(肌、骨、関節など)。弾力性や柔軟性を持ち化粧水などのベース成分として利用されます。

ヒアルロン酸Na

ニワトリのとさかからつくられます。現在はほとんどが微生物による発酵生産バイオテクノロジーによって合成されています。分子量が大きく保水力が高い特徴があります。基礎化粧品に配合され肌の保護膜を作り効果を発揮します。

グリセリン

パーム油やヤシ油などの天然油脂からつくられます。多価アルコールの一種です。トロッとした粘性を持ちクリームなどの質感を出す目的で使われます。ヒアルロン酸Naやコラーゲンと組み合わせることでさらに高い保湿効果が期待されます。

ジプロピレングリコール(DPG)

保湿成分である多価アルコールの一種であるプロピレングリコール(PG)をより低刺激にしたものです。粘性が高い特徴があります。他の成分が溶けやすいため多くの化粧品に使われています。

セラミド

細胞間脂質の一つ。高い保湿能を有しています。肌のバリア機能を支えています。セラミドには7種類ありますが、中でもセラミドEOP(バリア機能形成)、セラミドNG(高い保水力)、セラミドNP(水分保持の持続力が高い)、セラミドAP(ピーリング効果により表皮のターンオーバーを正常化する)が保湿剤に利用されます。

ヘパリン類似物質

構造的に多くの親水基(水分と結合しやすい部分)を持っているため、角層内で水分と結合し、水分を保持します。

尿素

構造的に多くの親水基(水分と結合しやすい部分)を持っているため、角層内で水分と結合し、水分を保持します。

ポリオクタニウム

リピジュアともいわれ、ヒアルロン酸の2倍の保湿力があります。人体の細胞膜の構成にかかわるリン脂質をモデルに開発されました。水洗いの後約1時間経過しても保湿力を維持する特徴があります。安全性が高いといわれています。

以上のような直接的に角質に水分増加作用をもたらすヒューメクタントと、クリームやローションなどの基剤とともに製剤全体としてその保湿作用を発揮します。

エモリエントとは

<エモリエント>とは、「肌から水分の蒸散を防いで肌の水分を保持し、間接的に角層の水分量を上昇させる製剤」を言います。エモリエントの中で、肌の表面を覆って水分の蒸散を抑制する成分を閉塞剤、あるいは密封剤といいます。白色ワセリンは代表的な閉塞剤の一つです。

塗布直後の角質水分量の増加効果はありませんが、白色ワセリンなどのエモリエントが皮膚の表面を覆うことによってその下の角層に徐々に水分が貯留することで角質水分量が増加します。

エモリエントには、白色ワセリンの他に、白色ワセリンの不純物を除去して精製したプロペト、亜鉛華軟膏、ミネラルオイル、オリーブオイルなどがあります。これら単独でエモリエントとして使用されるもの以外にも、天然油脂、長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリン、リン脂質など化粧品や保湿化粧品にエモリエントとして配合されるものもあります。

保湿剤はモイスチャライザーとエモリエントを組み合わせている

実際使用される保湿剤の多くは、閉塞剤となる油脂性成分を含む油相としてのエモリエント、ヒューメクタント、そして水分を含む水相が乳化された乳剤性の軟膏・クリーム・ローション・ゲル・フォームなどを基剤とした製剤です。

これら保湿剤による角質水分量の増加は、ヒューメクタントと水の作用により直接的に速やかに起こり、エモリエント(閉塞剤)の効果により持続的になります。

閉塞剤となる油脂性成分を含む油相としてのエモリエント、ヒューメクタント、そして水分を含む水相が乳化された乳剤性の軟膏・クリーム・ローション・ゲル・フォームなどを基剤とした保湿剤。それだけで十分保湿するに足るものですが、使い方によって微妙に効果が違ってきます。

効果的な使い方について考えます。

保湿剤の効果的な使い方

塗布量

たくさん塗った方が保湿効果が高いような気がしますが、適量の目安があります。

クリームの場合指の先端から第一関節までチューブからの外用薬を伸ばした量(1FTU=ワン・フィンガー・チップ・ユニット)を、ローションの場合手の平の窪みに1円玉くらいの大きさの量を、これらを両手のひら相当の範囲に塗布するのが適量の目安です。

それ以上の量を塗っても保湿効果に影響しないという研究結果が出ています。ですから塗れば塗るほど保湿効果が高くなるわけではないのです。かえってべたつき感が不快の原因になるかもしれません。適量をしっかり塗るのが大切です。

感覚的には、「保湿剤の油分で皮膚の表面が光る程度」「ティッシュ1枚が貼り付く程度」がベストです。

使用回数

一日1回塗るより、一日2回塗った方が明らかに保湿効果が高いという研究結果が出ています。特に忙しい朝に保湿剤を塗るのは大変煩わしいですが、朝と夜(可能なら入浴後)の2回の保湿剤の塗布が効果的です。

またアトピー性皮膚炎の方の場合、そうでない人に比べて保湿剤の使用を中断すると塗布前の状態に早く戻ってしまいます。ですからアトピー性皮膚炎の方は毎日連続して保湿剤の塗布が理想的です。

剤形

剤型によっても若干の保湿効果の違いが生じます。ヘパリン類似物質含有保湿剤(ヒルドイド等)の場合、ローション剤の方が、クリーム剤(ソフト軟膏を含む)よりも10%程度保湿効果が高いようです。

使用感も重要な要素です。手早くローションで保湿するのが好きな人もいれば、クリーム剤の使用の方が保湿された感じが高いと感じる人もいます。

夏はローション冬はクリーム、といった使い分けも賢い使い方です。自分にとって心地よい保湿剤の選択が継続した保湿につながります。

気は早いですが、これから訪れる秋と冬にはしっとりした健康的な肌で乗り切りましょう。

この記事の監修者

Introduction

宮の森スキンケア診療室 院長 上林淑人

上林 淑人

宮の森スキンケア診療室 院長

経歴

医学博士

平成2年 札幌医科大学医学部 卒業、皮膚科入局

平成4年 形成外科入局

平成6年 医学博士号取得。

旭川赤十字病院、室蘭市立病院に赴任

平成10年 宮の森スキンケア診療室 開院

専門・所属学会

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • 日本皮膚科学会
  • 日本臨床皮膚科医会
  • 日本東洋医学会
  • 日本癌学会
  • 日本熱傷学会正会員


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