札幌市中央区の皮膚科 宮の森スキンケア診療室

Column

院長コラム

パソコンと本を置いた明るいデスク

睡眠とお肌の関係(肌荒れ、老化、ニキビ、アトピー、漢方)

お肌の科学ゼミ

お肌の科学ゼミ

悩ましい肌荒れ。肌荒れは皮膚炎の原因になり、また化粧のりが悪いなど特に女性にとってはストレスの種です。

季節による乾燥、ストレス、野菜不足などによるビタミン不足、睡眠不足など、原因を挙げればきりがないと思われます。

このうち睡眠不足は意外と肌荒れの原因になることが多いと思います。

何故睡眠不足で肌荒れが起こるのでしょうか。

睡眠不足と肌荒れの関係

肌荒れに正確な定義はありませんが、一般的には、カサカサと皮が剥ける、ひび割れる、肌の肌理(キメ)が乱れる、と云った状態でしょうか。

睡眠中に分泌されるホルモンの中に「成長ホルモン」があります。

成長ホルモンは、脳下垂体から分泌され、細胞分裂を盛んにする「成長に関する作用」と「代謝に関する作用」を持っています。

皮膚に対しては、皮膚の角質細胞や線維芽細胞の細胞分裂を促進し健康な肌を維持するのに必須であり、角質細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)を維持促進することで肌理の整った肌を守っています。すなわち肌荒れを防ぐには成長ホルモンが重要なウェイトを占めています。

また「代謝に関する作用」の中でも特に、炭水化物、蛋白質、脂質の代謝を促進する作用は重要です。皮膚においても、健康な肌を維持するための各種ホルモンやサイトカインの合成と産生に、成長ホルモンはなくてはならない存在です。

肌荒れを防ぐには十分な睡眠が必要

成長ホルモンは睡眠中に多量に分泌されます。睡眠中に2時間から3時間の間隔で分泌されるのです。

ですから理想的には、2サイクル、すなわち最低でも6~7時間の睡眠が必要です。

肌荒れを防ぎ肌荒れの修復には成長ホルモンが必要であり、それには十分な睡眠が不可欠なのです。

睡眠不足により肌の老化を早めてしまう可能性もあるのです。

睡眠不足と肌の老化の関係

脳の松果体から合成・分泌されるホルモンであるメラトニンは、睡眠と密接に関係し概日リズム(体内時計)や光周性(日照時間の変化に対して、生物が示す様々な反応のこと)を調節しています。このメラトニンの分泌は睡眠不足により抑制されます。

メラトニンには強い抗酸化作用があり、老化防止や発がん抑制に効果があることが基礎研究で報告されています。

その恩恵は皮膚においても同様で、メラトニンの分泌量が少ないと肌細胞(角化細胞や線維芽細胞など)は紫外線などによる活性酸素のダメージを受けやすくなり、肌の老化を進めてしまう可能性があります。

またカエルの皮膚において、メラトニンは皮膚の色素に対し退色作用があることが明らかにされています。このことから人においても抗色素細胞作用効果があるのでは、シミの予防になるのでは、と研究がされているようですが今のところ明らかにはされていないようです。

メラトニンと睡眠の関係

メラトニンは、日中に光を浴びると分泌が減少し、夜になって暗くなってくると分泌量が増えます。

一方で、夜間に光が当たると分泌が急速に抑制されるようです。すなわち、夜更かしをしたり、明かりを消さずに寝たり、昼夜逆転していたりすると、メラトニンは正常に分泌されないのです。

規則正しく部屋を暗くして睡眠を十分にとることは、健康の維持だけでなくお肌にも、特にお肌のアンチエイジングにも大切なようです。

睡眠不足とニキビの関係

睡眠不足により、成長ホルモンの分泌が減ることは先に述べました。

これにより肌の生まれ変わり(ターンオーバー)がうまく行かなくなり肌荒れの原因となります。

肌荒れによりバリア機能が損なわれ、毛穴に潜むアクネ菌が閉鎖面皰(白ニキビ)に感染し、いわゆるニキビ(尋常性ざ瘡)の発生原因となります。

睡眠不足による自律神経の乱れ

睡眠不足は自律神経の調和を乱します。

自律神経には、交感神経と副交感神経があります。

交感神経は、活動時、特に緊張、興奮、戦闘、ストレスなどに置かれた状態の時に優位になります。一方の副交感神経は、休んでいる時やリラックスしている時に優位となります。

睡眠不足により、疲れやストレスが溜まると交感神経が優位な状態が続きます。

また交感神経が優位になると、皮膚の血管が収縮し血流が停滞し様々な皮膚のダメージの回復が遅くなります。また興奮し精神が高ぶった状態が続くため結果的に睡眠不足につながります。悪循環です。

こんな状態のときは、ストレスに対応するコルチゾールやアドレナリン、アンドロゲン(男性ホルモン)といったホルモンの分泌が盛んになり、結果的に皮脂分泌が増えてニキビが出来やすくなります。

このように睡眠不足はニキビの悪化の原因になるのです。

睡眠不足とアトピー性皮膚炎の関係

睡眠不足による成長ホルモンの分泌低下で、肌荒れが進みバリア機能が低下し様々なアレルゲンの皮膚内への侵入を許します。

その結果アレルギー反応が強く生じ、アトピー症状が悪化します。

また低下したバリア機能ゆえに新たなアレルゲンに対する感作が起きやすくなり、アトピーの悪化因子を増やしてしまう可能性があります。

疲れ・ストレスと睡眠不足の悪循環

ストレスや疲れで自律神経の不調が起こり交感神経優位になってしまいます。このことより十分な睡眠がとれず結果的に睡眠不足に。

睡眠不足が続くと、疲れやストレスが溜まり自律神経の乱れが生じ交感神経優位に。

「疲れ・ストレスが先か睡眠不足が先か」という話は、「卵が先か鶏が先か」という話と似ていますね。

どちらにしても結果的に免疫力が低下し、しかもアレルギー症状が悪化することが明らかになっています。

アトピー性皮膚炎の症状が悪化し、時に掻破するなどして細菌感染を合併しやすくなります。

また自律神経の乱れにより交感神経優位となることで、皮膚の血流が悪くなり肌荒れが進行しやすくなりアトピー性皮膚炎が悪化します。

アトピー性皮膚炎の悪化を防ぎ、お肌の健康を維持するには十分な睡眠が必要なようです。

睡眠を漢方・東洋医学から考える

さて、睡眠不足とお肌、ニキビ、アトピー性皮膚炎などの関係をまとめていると、自分はどうしても漢方・東洋医学的な考察を無視できなくなります。

睡眠不足と睡眠障害や不眠症とは異なるものです。

睡眠不足は「仕事が忙しくて寝る時間がない」「受験生である」「睡眠時間を削ってゲームをしている」といった単純に睡眠時間が短いことが原因のものと、不眠症や睡眠障害が原因となるものがあります。前者は、意図的に睡眠時間を確保するなどするしかなく、解決はそれぞれ個人に委ねられています。

五臓六腑と睡眠の関係

漢方には五臓六腑という概念があります。五臓は、心・肺・脾・肝・腎になります。

このうち「心」は、精神、意識、思惟などの精神意識活動を主ります。同時に循環器系の血のめぐり(血脈)を主ります。心の機能低下(心血虚、心陰虚)で、寝つきが悪い、眠りが浅い、よく目が覚めるといった睡眠障害が起こることがあります。

「肝」は情緒系中枢・自律神経系の機能を担い、気(エネルギーのようなもの)を「のびやかにめぐらせる」作用があります。肝の機能低下(肝血虚、肝陰虚)で、いらいら感などが出現します。特に精神的ストレスなどは、情緒系や自律神経系に影響し、「肝気欝血(かんきうっけつ)」と呼ばれるいわゆる抑うつ・緊張の状態を生じさせます。そのため不安感・焦燥感・緊張感が起こり不眠になることがあります。

漢方薬による考え方

「心」の機能低下(心血虚、心陰虚)による不眠には、補血安神薬(血虚を補い精神安定・催眠の効果を持つ)を含む方剤を使用します。酸棗仁湯など。

「肝気鬱血」に対しては、これに伴う気滞(エネルギーが滞る)を改善する枳実(きじつ)や陳皮(ちんぴ)などの理気剤、興奮を鎮静する黄連(おうれん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)などの瀉火薬、肝気を疏泄(そせつ)する(肝気の流れをスムーズにする)柴胡(さいこ)、厚朴(こうぼく)などの疏肝解鬱薬を含む方剤を使用します。抑肝散、甘麦大棗湯、黄連解毒湯など。

睡眠を東洋医学的に考察してみました。

注意:不眠症、睡眠障害は、いわゆるメンタルクリニック(神経精神科)や心療内科などが専門です。当院では不眠症や睡眠障害の治療は行っておりません。

この記事の監修者

Introduction

宮の森スキンケア診療室 院長 上林淑人

上林 淑人

宮の森スキンケア診療室 院長

経歴

医学博士

平成2年 札幌医科大学医学部 卒業、皮膚科入局

平成4年 形成外科入局

平成6年 医学博士号取得。

旭川赤十字病院、室蘭市立病院に赴任

平成10年 宮の森スキンケア診療室 開院

専門・所属学会

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • 日本皮膚科学会
  • 日本臨床皮膚科医会
  • 日本東洋医学会
  • 日本癌学会
  • 日本熱傷学会正会員


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